Special Lecture: “The Theory and Practice of ESG Integration”— Learning Sustainability Strategies from Corporate Practice
特別講義「ESGインテグレーションの理論と実践」— 企業の現場に学ぶサステナビリティ戦略
(2025年5月30日)
2025年6月19日
2025年5月30日、特別講義「ESGインテグレーションの理論と実践」の一環として株式会社クボタよりコンプライアンス本部長の山田進一氏を講師として迎えました。
本講義は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する理論とその企業実践を学ぶことを目的としており、今回は、グローバルに事業を展開する企業のコンプライアンス本部長としてご活躍されている山田氏から、リスクマネジメントやガバナンス強化を通じた具体的なESG取り組みについてご紹介いただきました。
講義の冒頭、本授業の主担当教員の星野俊也ESG-IREC共同代表が山田氏を紹介し、その豊富な実務経験に触れながら、参加学生に対して活発な質疑応答を通じた主体的な学びを期待する旨を述べました。

山田氏によれば、現在では農業機械や建設機械、上下水処理設備、除染機器など多岐にわたる事業を展開しているクボタがもともとは水道用鋳鉄管の量産で日本の近代水道の発展に貢献するなど、1890年の創業当初から「事業を通じた環境・社会課題の解決」を企業の使命として掲げてきていたといいます。いまや売上の約8割を海外事業が占める同社の活動ですが、「食料・水・環境」を企業ミッションに掲げ、持続可能な社会の実現に向けた貢献が目指されていることを山田氏は強調されました。
続いて山田氏は、「社会に役立つ製品を」「魂を込めた正しい価値」という創業者の精神に根差した企業理念が現在のクボタが掲げる2030年ビジョン「命を支えるプラットフォーマー」につながっていることに触れ、このビジョンが、単なる製品提供にとどまらず、精密農業やICTの活用を通じて新たなサプライチェーンや生産基盤を構築し、人々の暮らしと命の基盤を支える企業へとさらに進化することを目指しているとも述べました。
企業統治とリスクマネジメントとの関係では、同社が過去に公正取引委員会から談合問題に関する勧告を受けた経験を契機に、自社のガバナンス体制の強化に取り組んできた経緯などから、現在では18のリスク管理項目を設定し、それぞれに対応する主幹部門が責任を持って管理する体制が構築されていること、内部通報制度(社内ホットライン)の整備に加え、法令遵守、経済安全保障、人権課題など、多様化・複雑化するリスクに対し、グローバルな視点からの包括的な対応が取られていることなどが紹介されました。
講義後の質疑応答では、参加学生から「命を支えるプラットフォーマー」の具体像や、既に実現している取り組みに関する質問があり、山田氏は、機械の販売にとどまらず、データ解析や他企業との連携を通じて、持続可能な農業を支えるビジネスモデルの構築を進めていることなどを紹介しました。
「K-ESG」という言葉に象徴されるクボタのESG経営が事業活動と社会課題解決の両立に取り組む具体的な企業の実例として本講義の履修生にとって有益な学びの機会となりました。
