The Invisible Battlefield Hindering Ukraine’s Recovery

ウクライナ復興を阻む見えない戦場 ―地雷に覆われた穀倉地帯

2026年3月19日 

ロシアがウクライナに侵攻し、前線は一進一退を繰り返しているので、ロシア軍はウクライナ国内の多くの地域に地雷を敷設しており、またウクライナ軍も防衛線の中で一部で使用したとの報告もある。特に穀倉地帯であるサボリージャ州・ヘルソン州などには同じ土地に何度も地雷が埋められた可能性が高い。

また多数のクラスター爆弾が使用されたことにより、農地に大量の不発弾が埋まっている可能性もある。クラスター爆弾は空中で爆発し、数十から数百の小型爆弾を広範囲にばら撒き、その10%から30%は不発弾になると言われている。対人地雷もクラスター爆弾も無差別大量殺人兵器として、その非人道性の高さから、それぞれ世界百数十カ国以上が加盟する国際条約で使用が禁止されているが、ロシアは加盟しておらず、またクラスター爆弾条約についてはウクライナも加盟していない。その不発の砲弾やロケット弾が地雷と共に、チェルノーゼムと呼ばれるウクライナ特有の肥沃な黒土に大量に埋もれている。

普通の農場土壌は表土が20〜30cm程度だが、ウクライナのチェルノーゼムは深さが50〜100cm以上もある。雨季などで水を含むと非常に柔らかい泥状になる。だからこそ小麦・トウモロコシ・ひまわりなどの栽培に理想的であり、ウクライナが「世界の穀倉地帯」と呼ばれる所以でもある。しかしそれだけに落下した不発弾が地中深くに埋もれ易い。ロシア軍がウクライナ侵攻を開始した2022年2月は丁度ラスプーチツァ(泥の季節)の時期で、ロシア軍戦車は舗装された道路以外は走行できなかった。短期間でキーウを占領するというロシアの目論みが失敗した原因の一つと見られている。

日本の本州の7割に相当する面積が地雷で汚染

仮にウクライナ戦争が今すぐ終結したとしても、地雷や不発弾に汚染された危険地帯を安全な農地に戻すには少なくとも20年以上かかるものと推定されている。その汚染地帯面積は、これ以上戦火が広がらないとしても、既にウクライナ国土の約29%である約174,000平方キロメートルに及んでいる。これは日本の本州の約7割に相当する。

今回のロシアの侵攻では少なくとも数百万個の地雷が敷設されたと推定されてる。広大な農地をトラクターで耕すと地下の地雷が爆発する。またクラスター爆弾はばら撒いた小型爆弾が不発弾になる率が高いが、それが数か月から数年後に突然爆発する「遅延爆発」をおこす可能性もある。更に、大雨や洪水で地雷や不発弾が土砂と一緒に流され、これまで安全と思われていた場所に達する危険も指摘されている。

ウクライナは輸出の40%以上を農産物が占めている。特にひまわり油では世界最大の輸出国だ。ウクライナの復興は農業輸出の再建が鍵になる。これに長期間を要すると、ウクライナ国内経済だけでなく世界の食料市場への影響も甚大になる。

日本だからこそ出来ること

日本はこれまでも戦火に見舞われた多くの国や地域で地雷除去と農地復旧の支援を行ってきた実績がある。農地の地雷除去には、金属探知機・地中レーダー、無人のブルドーザーや装甲ショベルを遠隔操作する機器とその知見が求められる。これらは全て日本のメーカーが提供可能だ。またドローンに搭載できるAI地雷探知機も日本の企業や研究機関が開発に取り組んでいる。

地雷除去作業完了後の農地復旧整備にも、まだ地雷や不発弾のリスクは続くため、当面は無人トラクターが求められる。これも日本の農機メーカーは既に無人自動運転のトラクターを製造している。

これらの優れた製品や技術力と知見を使って、地雷の探知から、除去、農地再生、播種、GPS農業管理、収穫まで各段階の支援を、バラバラではなく連続したプロセスとして日本の政府機関が一括して提供することができるであろうし、全ての段階ではないが、一部は実際にJICA(国際協力機構)がHumanitarian Mine Action and UXO Clearance Programとして取り組んでいる。

第二次大戦後、日本もまた荒廃した国土の再建という困難を経験した国である。その過程で培われた復興の知見や産業技術は、形を変えて国際社会に役立てることができるはずだ。地雷除去から農地再生、農業生産の回復に至るまでの一連の取り組みは、日本がこれまでの経験と技術を生かして貢献し得る分野の一つと言えるだろう。ウクライナの人々による復興の努力を支える形で、日本らしい支援の在り方を模索していくことが期待される。

ニュース・活動報告

1 2 3 4 5 7 8 9 10

ESG-IREC

Scroll to Top