Reducing Plastic Waste

プラスチックごみ削減に向けた企業活動

2022年12月19日

コペルニクは、途上国の課題解決を加速するために、未解決の課題を見つけ、解決につながりそうな介入を小さいスケールでテストし、結果を共有することを行っている。途上国課題解決のR&Dラボの役割を果たそうと日々活動を行っている。今までに、農業、水・衛生、エネルギー、環境、といった分野で70近くのテストを行っており、結果の一部はSolutions Catalogで共有している。創業のきっかけは、キャリアの前半を過ごした国連の仕事をしているうちに、企業やベンチャーと積極的に協業を行い、かつよりデータで活動の効率を計測する、より開かれた開発支援のあり方を模索したかったからだ。

今回のコラムでは、その中でも、環境、特に廃棄ブラスチック分野での活動の一例を紹介したい。

廃棄プラスチックは、近年環境汚染の原因の一つとして大きな課題をなっている。特にプラチックごみ排出の世界トップ5を占めている中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカなどのアジアの国々では尚更だ[1]。インドネシアに本部を置き、活動の大部分をインドネシアで行うコペルニクとしても、この課題に注目しており、プラスチック再利用に関する実験や、アドボカシー・ドキュメンタリーの作成を行ってきている。

ご縁があり、ここ数年、廃棄プラスチックを無くす国際アライアンス (Alliance to End Plastic Waste, 略称AEPW、以下アライアンス)の日本での活動を手伝っている。

アライアンスは、2019年に開始した取り組みで、現在までに90以上のメンバー企業、賛同・支援パートナーが集まり、廃棄プラスチックを環境からなくすための様々な活動を行っている[2]。主な活動の一つが、廃棄プラスチック削減に向けた活動を行っている企業やNGOの活動に資金提供を行うというものだ。

もともと、プラスチックの原料を扱うエクソンモービルなどの石油化学系の企業や、プレスチックを使った製品を製造販売するP&Gなどのリテール企業が自発的に集まった団体だ。近年のESGへの関心の高まりもあいまって、プラスチックの製造・流通にかかわる企業が行う、環境への負荷を軽減するための努力の一つと言えるだろう。

アライアンスのウェブサイト

 

アライアンスとの協業の一環で、2022年には4回にわたるウェビナー・シリーズを開催し、国内外での革新的な廃棄プラスチック削減の取り組みを紹介してきた。このウェビナー・シリーズは、アライアンスが支援している起業家をオンラインでインタビューし、録画した動画に日本語字幕をつけて、日本のオーディエンスに対して紹介するとともに、日本のアライアンスメンバー企業の方々と、これらのイノベーションについて議論するという基本的な形をとっている。

第1回目はフィリピンで活動するPLAFという団体の取り組みを紹介。この団体は廃棄プラスチックを使い、建材や家具を作っている。創業者で代表のフランソワ・ルサージュさんは、もともとはフランス政府でIT関係の仕事をしていたが、旅行で東南アジアを訪れた際に見たプラスチィックごみが脳裏から離れず、いつか何とかしたいと思っていたという。オランダ人の建築家アン・ソフィー・バン・デール・スペックさんもPLAFにチーフ・プロダクト・オフィサーとして参画し家のデザインなども行っている。

第2回目は、主にコスタリカで活動するCRDCグローバルのドナルド・トンプソンさんをインタビュー。CRDCは、前回のPLAFのように、廃棄プラスチックを建材に用いているが、木柱ではなく、Resin8というセメントと廃棄プラスチックを混ぜた材料を作り、更に大きなスケールで活動している。彼は、普通はリサイクルされないポリ塩化ビニールや、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックを主にリサイクルしていることを強調していた。

廃棄プラスチックを使った建材で建てられた家や家具(PLAFウェブサイトから)
ドナルドさんインタビューの様子

 

第3回目は、高解像度カメラにて電子透かし技術を用いてプラスチック廃棄物を正確に分別することで高品質のリサイクル製品を生み出すことを目指しているHolyGrail2.0イニシアチブを取り上げた。これは、「プラスチックの選別」という、リサイクルでは欠かせないが非常に手間が掛かり、エラーも起こりやすいプロセスに着目したもの。目に見えないQRコードのようなものを、あらかじめパッケージングのデザインに刷り込んで、回収されたときに、特別の機械を使って正確に分別する。これはP&Gのプロジェクトとして開始し、現在は160以上の企業が賛同しているという。

最終回の4回目は、日本で活躍する起業家2人をフィーチャー。食品のテイクアウト時に出るプラスチックゴミへの問題意識から生まれた、地域共通のリユース容器シェアリングサービスを行う事業を行う株式会社カマンの代表善積慎吾氏からは、事業を始めるきっかけ、そして今後の計画などをお話いただいた。レコテック株式会社の野崎衛氏は、“ごみ”という概念がない社会の実現を目標に掲げ、資源調達プラットフォームを構築し、企業や自治体と共同してリサイクル資源の回収、品質管理、再製品化の仕組みを見える化している。

廃棄プラスチックをスキャンして分別する様子 (HolyGrail ウェブサイトより
株式会社カマンのサービス「Megloo」

 

このウェビナー・シリーズでは、起業家のみならず、テレビ東京キャスターの塩田真弓さんや、日本企業で廃棄プラスチック削減に取り組む様々な方々もパネリストとして参加いただいた。

廃棄プラスチック削減には、企業の努力のみならず、消費者の行動変化、政策立案、NPOなどの役割が必要だ。私も世界で進む廃棄プラスチック削減の具体例を多く学ばせていただいたが、今後もこれらの活動に触発され、さらなる企業のESG活動が進むとともに、様々なプレーヤーがより革新的で効果のある活動を加速できればと良いと考えている(2022年12月19日)。

中村俊裕 OSIPP招へい教授、コペルニク共同設立者兼代表。

パネリストと話し合う様子
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