「誰一人取り残されない社会を構築する:車椅子ヨガ・インストラクターからのメッセージ」
(阪大×国連 未来社会フォーラム)の開催
2023年9月14日
2023年9月13日14時より大阪大学中之島センターにおいて、ESG-IRECが主催する「誰一人取り残されない社会を構築する:車椅子ヨガ・インストラクターからのメッセージ」と題する特別イベントが開催されました。この日は、大阪大学公式YouTubeチャンネルを通じたオンラインでの参加者を含め、大阪大学の関係者、一般参加者、報道関係者ら総勢170人が、ESG(環境・社会・企業統治)の実践を通じ、多様な背景を持つ人々誰もが活躍できる豊かな社会を具体的にどう実現していけばよいのかについて考える貴重な機会となりました。
プログラムは、まず、全体司会にあたった星野俊也教授(国連システム監査官・大阪大学名誉教授〔元国連日本政府代表部大使〕・ESG-IREC創設ディレクター)より、2023年が2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標達成年とされる2030年までの折り返し点となることから、「誰一人取り残されない世界の実現」というSDGsの基本理念を改めて想起して具体的な活動を加速化する必要や、企業がよりよい世界の構築に主体的に取り組むESGの推進にあたり、すべてのステークホルダーの人権を重視し、多様性を力に人々が潜在力を最大限に発揮できる公正で包摂的な未来社会の形成に向けた気づきを促すという本企画の趣旨説明から始まりました。
プログラムは、まず、全体司会にあたった星野俊也教授(国連システム監査官・大阪大学名誉教授〔元国連日本政府代表部大使〕・ESG-IREC創設ディレクター)より、2023年が2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の目標達成年とされる2030年までの折り返し点となることから、「誰一人取り残されない世界の実現」というSDGsの基本理念を改めて想起して具体的な活動を加速化する必要や、企業がよりよい世界の構築に主体的に取り組むESGの推進にあたり、すべてのステークホルダーの人権を重視し、多様性を力に人々が潜在力を最大限に発揮できる公正で包摂的な未来社会の形成に向けた気づきを促すという本企画の趣旨説明から始まりました。
開会の挨拶に立った山本べバリー・アン大阪大学理事・副学長(大阪大学ユネスコチェア代表)は、このようなイベントが「包摂的な社会」のあり方を構想する私たちのイマジネーションを高めるために必要だとしてその重要性を指摘するとともに、「健康」という言葉の意味も拡大させないといけないとして、障がいや難病でも「できないことではなく、何ができるかに焦点をあてる」考え方の大切さを強調しました。
本イベントの開催にあたっては、国連調査訓練研究所(UNITAR)のルイス・ガジェゴ評議会議長、アクセシブル・ヨガ・アソシエーションのジヴァナ・ヘイマン代表、車椅子の経営者でユニバーサル・デザインやユニバーサル・マナーの普及を進める株式会社ミライロの垣内俊哉社長の3氏より特別のビデオ・メッセージが寄せられました。ガジェゴ議長は、本イベントを共催する立場から、国連としても「誰一人取り残されない社会」の実現を重視する観点から本企画の意義に賛意を示すとともに、様々な困難を乗り越えるためには、産学官、市民の力の統合が不可欠であると訴えました。
本プログラムは休憩を挟んで第1部と第2部に構成されており、第1部では、登山中の事故で車椅子生活を余儀なくされながらも車椅子のヨガ・インストラクターとして自立をし、誰でもどんな身体でも、たとえ障害があってもできる「アクセシブル・ヨガ」の普及に取り組んでいるロドリゴ・ソウザ氏による特別レクチャーとヨガ・クラスの実演が行われ、第2部では同氏の講話と指導によるヨガ体験を受けた専門家によるラウンドテーブルディスカションが行われました。
ソウザ氏は講話の中で、不慮の事故で脊髄を損傷し、車椅子生活となりながらも、リハビリのメニューがヨガのポーズに通じることを発見し、また、それぞれの身体に適した「アクセシブル」なヨガの実践を通じ、薬に依存しなくても心身を調えるアプローチがあることを説明しました。そして現在では自らがインストラクターとなり、さらにスウェーデンのNGOでは同じく事故などで障がいを負った人々の社会復帰に力を貸す活動に従事していることなど、仲間を想い時折声を詰まらせながら、自身の経験を語りました。
講話の後には、ソウザ氏による車椅子ヨガのデモンストレーションとレッスンに移り、元DJでもある同氏の選曲したBGMとともにホールに集まった車椅子の参加者を含む聴衆全員が椅子に座ったままでもできるヨガを体験しました。
第2部では、「誰一人取り残されない社会の構築」をテーマに、医学系研究科でスポーツ医学を専門とし、安全安心なスポーツを通じた健康社会づくりに取り組む中田研教授がモデレータ―を務めるラウンドテーブルディスカッションが開催されました。この討論のなかでは、ソウザ氏とともに、伊東亜紀子氏(ESG-IREC招へい教授、国連経済社会局国連障害者権利条約事務局チーフ)、星野千華子氏(アクセシブル・ヨガ・アンバサダー、国連SRCヨガクラブ公認インストラクター・RYT500)、中野陽子氏(アクセシブル・ヨガ・アンバサダー、アートラウンジクリニック院長)、山中浩司教授(人間科学研究科、大阪大学ユネスコチェア副代表)、谷野雅紀氏(J-Workout株式会社COO)が登壇し、それぞれの専門の立場から、どのようにして障がいや車椅子とともに暮らす人々も一緒に安全安心に生活できる包摂的な社会を築けるのか、産学官が連携してどのように私たち一人ひとりの意識を改革していくか、活発な議論が展開されました。
登壇者からは、防災などの分野でも障がい者のリーダーシップによって進められている好事例について知ってもらうべきだとの意見や、障がい者にとって何が実際の障害になっているのかを考えていかなければならないといった考えなどが提示されました。車椅子で参加した方たちからは今回の企画の意義を踏まえ、障がい者のためだけでなく、健常者も自分のこととして社会の問題を考える視点が必要だとの意見などが出されました。ディスカッションに参加したソウザ氏からもそうした社会変革の必要性が指摘されました。
プログラム終了後には参加者によって情報交換会が開かれ、そこでも障がい者の社会参加や全体的な意識変革について活発な議論が展開されました。
なお、本イベントは、AIやサイバー空間を活用し、スポーツを安全安心に行うために蓄積されてきた研究成果をスポーツ選手だけでなく若者、高齢者、障がい者を含め誰もが活用できるようにすることで健康社会づくりを目指す大阪大学サイバースポーツコンプレックス(CSC)事業の第6回シンポジウムと併催のかたちで実施されました。