MA-T System®ーHope for the Future and Solutions to Global Challenges

MA-T System®―ミライへの希望と地球規模の課題解決を目指して

2024年6月30日 

地球規模の課題解決への挑戦

アカデミアやひとつの企業では解決が難しい、一つの国でも解決できない複雑で国境のない地球規模の課題解決のためには、分野も産業も学術分野さえ横断で国境を越えて課題解決へ取り組む「連帯」の必要性があるとされています。地球規模の問題は、私たちすべての地球人に連帯の責任を問うているとのではないかと感じています。後にご紹介させて頂く日本発、大阪大学発の技術であるMA-T®(エムエーティー)の社会実装に向けた仕組みづくりは、この地球規模の課題解決のための壮大な挑戦のひとつであり、また、企業と大学が連帯し、科学技術イノベーションのビジネス展開を通じてさまざまな社会課題に具体的な解決策を提示する「ESGインテグレーション」の実践例としても位置づけることができます。

「MA-T System®」とは

「MA-T System®」とは、新しい未来の可能性を秘めた⾰新的な酸化制御技術です。これは、Matching Transformation System®の略で、水性ラジカルの活性度を制御することで、除菌・消臭から、感染症対策、高分子表面への機能付加、農薬・医薬品、抗がん剤への応用、また⾼難度の化学反応を常温常圧で可能とした技術の総称です。MA-T System®の応用が可能にしたメタン-メタノールの反応は、化学界では「ドリーム反応」と呼ばれています。大阪大学先導的学際研究機構の大久保敬教授が発見し、研究を継続されているこの技術は、カーボンニュートラルだけではなく、カーボンネガティブをも可能とする化学プロセスへの新しい可能性に富んだ技術です。現在、気候ショック状態の沸騰化する地球への対策や持続可能な開発目標(SDGs)への貢献が期待される技術のひとつであると考えられています。

「謎の水」として大阪大学に効果解明の為に持ち込まれたこの「MA-T®」の液体は、当時ベンチャー企業であった(株)エースネット社と(株)dotAqua社が大阪大学と共同し、分析・検証が行われた新規酸化制御技術です。この「MA-T®」は、99.985~99.995%が水分子で形成されており、活きている菌やウイルスが存在するときにのみ、必要な時に必要な量だけ水性ラジカルが水溶液の中に生成され、菌やウイルスを分解する「要時生成型亜塩素酸イオン水溶液」であることが分かりました。注1)

この技術の社会実装を目指し、2021年2月よりアース製薬と大阪大学との連携が締結され、オープンイノベーションによる社会課題解決のための取り組みが始まりました。

図)強い除菌力と高い安全性を実現した日本発の革新的技術『MA-Tシステム』による新CSV戦略を発表 (earth.jp):https://corp.earth.jp/jp/news/2020/pdf/20201201-01.pdf

感染症対策は人間の安全保障

私たちは新型コロナのパンデミックを経験し、感染症対策が国の経済を左右し、人間の安全保障にまで深く影を落とす事態を目の当たりにしました。コロナ禍で、日本の感染症対策は、国のレジリエンス向上や国土強靭化に直結する課題であり、人間の安全保障そのものとの認識がなされ議論が繰り返されました。その中で、レジリエンスジャパン推進協議会内に設置された「STOP感染症2020戦略会議」のもと、「感染症対策 新・生活習慣普及促進研究会」が設置され、マウスウォッシュのワーキングループを立ち上げました。大阪大学大学院薬学研究科の井上豪教授が率いるMA-Tプロジェクトチームは、当研究会と共に、「感染症対策に資する新生活習慣の普及促進に向けた緊急提言書」注2)の中で、「口腔ケアによる感染症対策の重要性」を訴える提言をまとめています。
MA-Tの特徴は、感染症対策の分野で大いに期待され、除菌・消臭剤としてだけではなく、手洗いの出来る肌用化粧品、また口腔ケアの出来る製品としての大阪大学の歯学部阪井教授のお力添えにより、アース製薬(株)との口腔ケアジェルの製品開発が進んできました。

オープンイノベーションとしての日本MA-T工業会の役割

この日本発の酸化制御技術である「MA-T System®」の社会実装を目的とし、2020年11月に一般社団法人日本MA-T工業会が設立されました。現在約115の企業・団体・大学等の皆様方と除菌剤・医薬品・表面改質・エネルギー等への広範な活用・展開を進めています。当工業会はMA-T®活用のプラットフォームとなり、MA-T®の普及と価値向上のため、オープンイノベーションを推進することでMA-T®を通じた産業創造と参画企業と共に経済活動促進を目指した取り組みを続けています。注3)

この日本MA-T工業会のオープンイノベーションの推進や産学連携の取り組みが評価され、2024年2月には、内閣府による第6回日本オープンイノベーション大賞の最高賞である内閣総理大臣賞を受賞いたしました。注4)

大阪万博から世界へ ―ミライへのかけはし―

2025年大阪・関西万博を通じ、「MA-T System®」を世界中に伝えていきたいとの思いで、「大阪ヘルスケアパビリオン」の「ミライのヘルスケア」ゾーンに出展することを決定いたしました。MA-Tの社会実装が進む未来をイメージした展示では、「ミライの口腔ケア」、「ミライの環境ケア」をテーマにしたMA-T®のミライ社会の技術を展示する事を予定しています。注5)実現したい未来には、ワンヘルスの視点を取り入れた人も動物も共に健康になるための動物の口腔ケアに関した展示も予定しています。

提供:(公社)大阪パビリオン

まとめ

ESG-IREC共同代表の星野俊也教授の2024年1月のコラムにございます、「最も脆弱な立場にある人も含めすべての人の安全が確保されない限り、誰も安全にならないという感染症対策の真髄はまさに『誰一人取り残されない』というSDGsの理念がいかに重要かを示していた」と述べ、「『誰一人取り残されない』ために包括的な取り組みを促す『人間の安全保障』は、コロナ対応にとどまらず、すべてのSDGsの達成のために重要な視座を提供している」注6)と指摘するお考えを熱く重く受け取り、この革新的な酸化制御技術「MA-T System®」の取り組みを2030年からさらにその先の未来も見据えた地球規模の課題解決を目指し、皆様と共に進めていきたいと考えております。

田畑 彩生(招へい研究員/大阪大学大学院薬学研究科/アース製薬株式会社MA-Tビジネスセンター企画室)

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注1)アース製薬株式会社News Release「強い除菌力と高い安全性を実現した日本発の革新的技術『MA-Tシステム』による新CSV戦略を発表」、2020年12月1日。https://corp.earth.jp/jp/news/2020/pdf/20201201-01.pdf(earth.jp)
注2)新・生活習慣普及促進研究会提言書案1020 (resilience-jp.biz)
注3)日本MA-T️工業会について|日本MA-T️工業会 (matjapan.jp)
注4)『MA-T®』、内閣府「第6回日本オープンイノベーション大賞」内閣総理大臣賞受賞! | 一般社団法人 日本MA-T️工業会のプレスリリース (prtimes.jp)
注5)一般社団法人日本MA-T工業会は2025年大阪・関西万博『大阪ヘルスケアパビリオン』『ミライのヘルスケア』ゾーンに出展いたします | 一般社団法人 日本MA-T️工業会のプレスリリース (prtimes.jp)
注6)星野俊也「『SDGs思考』とESG」、2024年1月25日、ESG-IRECウェブサイト
https://esg-irec.jp/sdgs-and-esg/

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