UN Deputy High Commissioner for Human Rights, Ms. Nada Al-Nashif Delivered a Keynote Address

特別講義「ESGインテグレーションの理論と実践」の一環として、国連人権副高等弁務官 ナダ・アル=ナシフ氏による基調講演が行われました

(2025年5月9日)

2025年2月5日

2025年5月9日、大阪大学大学院国際公共政策研究科(OSIPP)ESGインテグレーション研究教育センター(ESG-IREC)主催、国連政策研究委員会共催により、国連人権副高等弁務官 ナダ・アル=ナシフ氏による基調講演が開催されました。講演に先立ち、アル=ナシフ氏は大槻恒裕研究科長(ESG-IREC共同代表を兼任)を表敬訪問し、和やかな意見交換が行われました。

本講演は、豊中キャンパス法経講義棟法2番教室にて行われました。大槻共同代表の歓迎の挨拶により講演が始まり、ESG-IRECメンバーである蓮生郁代教授の司会の下で進行しました。学生・教職員・卒業生(OB/OG)を含む約150名が参加しました。

アル=ナシフ氏は講演の中で、近年の国際社会における人権の後退傾向に強い懸念を示し、言論の自由の抑圧や社会の分断、マイノリティに対する差別や暴力といった具体的な事例を挙げながら、現状に対する警鐘を鳴らしました。その上で、「人々のために機能する経済システムが必要であり、利益のためだけに働くものであってはならない」と述べ、経済・社会・文化的権利だけでなく、市民的および政治的権利、開発の権利、さらにはクリーンで健康的な環境への権利をも保障する新たな経済の枠組みとして、「人権経済(human rights economy)」という概念を提唱しました。また、すべての政府の意思決定は、人権を損なうのではなく、むしろそれを強化するものであるべきだという考えを強調しました。さらに、こうした人権経済の実現に向けては民間セクターの果たす役割も極めて大きいと述べ、日本が「ビジネスと人権」の分野において国際的に重要なプレイヤーであることにも触れました。

質疑応答のセッションでは、学生や教員が、AI技術とデジタル人権、グローバル企業の人権基準、低価格オンラインショッピングと労働環境、ESGと現場の乖離、人権の普遍性と文化・宗教的価値の対立など、多岐にわたるテーマ関する質問を寄せました。これらに対して、アル=ナシフ氏は丁寧にお答えになりました。特に、オンラインショッピングと労働搾取の悪循環に関する質問に対しては、前日に訪問した大阪・関西万博のドイツ・パビリオンにおける「循環型経済(circular economy)」の展示を引き合いに出し、包装や輸送に伴う環境負荷に言及しながら、企業が労働者を置き去りにすることなく、持続可能で責任ある形で業務の在り方を適応させていく必要があると述べられました。また、消費者の良心や社会的責任の意識が変化を促す、との見解も示され、強制労働などの深刻な人権侵害の連鎖を断ち切るには、企業への働きかけと並行して代替的な雇用機会の創出も不可欠であると強調されました。

参加者からは、「講演は非常に貴重で有意義な経験となり、20年前に卒業した者としても深く感銘を受けました。また、行政や企業、NGO、若者など多様なセクターが人権の視点で連携していることに大きな感銘を受けました」との声が寄せられました。

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