Course Lecture: “The Theory and Practice of ESG Integration”— Challenges and Prospects for ‘Responsible Investment’

特別講義「ESGインテグレーションの理論と実践」—持続可能な社会の実現に向けた機関投資家としての「責任投資」の課題と展望

(2026年7月17日)

2026年7月17日

2026年7月17日、特別講義「ESGインテグレーションの理論と実践」の一環として、第一生命保険株式会社の本多勇一氏をESG-IRECの招へい教員としてお迎えし、「持続可能な社会の実現に向けた機関投資家としての「責任投資」の課題と展望」について講義頂いた。講義は、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する理論とその企業実践を学ぶことを目的としている。

講義は、「投資家は、投資する資金に自らの意図を込めることができる」という視点から始まった。そして、その資金をどのような目的で運用するのかを明確にすることが、責任ある投資家としての第一歩であるとの説明があった。講義の中でも特に印象的であったのが、「お金には色がある」という言葉である。これは、資金を運用する主体が誰であるかによって、その資金の性質や運用方法が大きく異なることを表すものである。

続いて、投資家が投資を行う目的の説明があった。その目的は、大きく、経済的利益と社会的インパクト(環境・社会課題の解決)の二つに分けることができる。何をどの程度重視するかは投資家によって異なり、経済的リターンの獲得を主たる目的としながら、その実現に向けて社会的インパクトも考慮する機関投資家がいる一方で、社会的インパクトそのものの実現をより重視し、そのうえでリターンを求める投資家も存在する。後者について、ビル・ゲイツ氏が設立したゲイツ財団などがその例として紹介され、投資家によって投資目的の設定の仕方は多様であることが示された。

そして、第一生命保険株式会社では、「サステナブル投融資」と「スチュワードシップ活動」を両輪として、責任投資を推進している。スチュワードシップ活動とは、投融資先との建設的な対話などを通じて、企業価値の向上や持続的な成長を促す取り組みである。さらに、国内外のルール・メイキングにも積極的に参画し、責任投資による効果の最大化を図っているとの説明があった。

サステナブル投融資には、主に5つの手法がある。その一つである「インパクト投融資」では、投融資先が社会課題の解決に向けた強い意思を持っているかを確認することが重要である。一方で、社会課題の解決に対する強い思いがあっても、事業が必ずしも軌道に乗るとは限らない。そのため、投融資を判断する際には、社会課題の解決に向けた姿勢だけでなく、事業の継続性についても慎重に見極めているとのことであった。

また、サステナブル投融資の手法の一つに「ネガティブ・スクリーニング」がある。これは、生命保険事業の特性や社会の持続可能性などを考慮し、一定の資産や企業などを投資対象から除外する手法である。環境・社会リスクの軽減やステークホルダーからの信頼確保などを目的としており、具体的な取り組みとして、クラスター弾や生物兵器などの特定の兵器製造に関わる企業を投資対象から除外していることが紹介された。

さらに、第一生命保険株式会社の親会社である株式会社第一ライフグループは上場企業であることから、受益者としての保険契約者とともに株主の意向を把握することも重要となる。そのため、サステナビリティに対する認知や関心についてウェブアンケートを実施し、保険契約者・株主の意向を把握する取り組みを行っているとのことであった。アンケートの結果からは、サステナビリティに関する取り組みについての「認知度」は高い一方、サステナブル投資や責任投資に関する「認知度」はやや低い傾向が示されたとのことである。一方で、「社会課題解決と収益性のバランス」については、約8割が社会課題の解決を収益性と同等以上に重視していることが明らかになった。収益性のみを考慮すべきと回答した割合はわずか1%であったとのことだった。

講義の最後には、今後の責任投資の展望についてお話しいただいた。投資家には、現役世代だけでなく将来世代の長期的な利益を実現するための責任があり、その責任を果たすための投資活動を実践につなげていくことが重要であるとのメッセージが示された。そして、責任投資の担い手となるのは機関投資家だけではなく、一人ひとりの個人でもあり、個人が責任投資の担い手となることで社会は変わり得る、という言葉で講義は締めくくられた。

講義の後、学生には「1000億円の投資計画を考える」という課題が提示された。学生たちは、目先の利益だけを追求するのではなく、将来を見据えた長期的な投資計画について考え、それぞれの視点から多様な意見を出し合った。

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