The Data Centre Race, Where Water and Electricity Are the Main Challenges

水と電気が足かせのデータセンター競争

2026年9月11日

英国や日本も含め多くの国がデータセンター(以下DCと表記)の誘致に注力している。その理由はDCが単なる「サーバーの誘致」ではなく、AI時代の産業基盤そのものを国内に確保する競争と捉えているからであろう。英国では2024年にDCをCritical National Infrastructure(重要国家インフラ)に指定し、2030年までにDC容量を3倍にする意向だ。

なぜDC誘致に注力するのか

英国の場合を見てみると、その主な理由は5つ考えられる。

➀DCを国内に持つことは、国家のAI競争力の基盤になる。

➁英国政府が推進するAI Growth Zonesでは、£28.2 billion(約6兆円)の投資計画と約15,000人の雇用が示されている。業界団体techUKは、DC産業が2035年までに英国経済へさらに最大£44 billion(約9.5兆円)程度寄与する可能性を試算しているなど、巨額の設備投資を呼び込める。

③巨大なDCがあれば、その周囲にソフトウェア企業、AI企業、通信、サイバーセキュリティ、研究機関、電力・設備会社などが集まりクラスター形成を期待できる。

➃政府、金融、医療、防衛、通信などのデータを外国のインフラに過度に依存すると、経済安全保障上のリスクが高まる。

➄米中を中心とする地政学リスクに備えるためもある。かつて国家の産業力を左右したのが石油、鉄鋼、港湾、発電所だったとすれば、AI時代にはそこにcomputing capacity(計算能力)を加える必要がある。米国では5,000以上のDCがあり、AI拡大を背景に需要が2030年まで年率約9%で増えると推計されている。米国各州も税制優遇などを使ってDCを誘致している。また中国は内モンゴル自治区に敷地面積が93万㎡という超巨大DCキャンパスを持ち、米国と共にDC大国と呼ばれている。地政学リスクの拡大を抑えるためにも自国DCの強化は欠かせない。

DC推進上の課題は

先ず、DC自体は無人に近く、直接に大きな雇用を創出する訳ではない。前述3で述べたような関係企業や研究所がもしも周辺に集まれば雇用につながるという期待だ。

また英国にあるDCは本当に「英国の戦略資産」と言えるのか。 Amazon AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなど米国大手企業は既に英国内に大規模DCを複数持っているが、英国が土地と電力と水を提供するが、その建物内で生み出されるAIサービスと利益は米国企業のものであり、世界最高レベルのセキュリティに守られている。果たして英国にどれくらい知財が残るのか、危機時に英国政府がその計算能力を確保できるか、など疑問も残る。

またDCは土地だけでなく膨大な電力と水も必要とする。この2つが今後、英米だけでなく多くの国で深刻な問題になるだろう。

電力問題

DCは24時間稼働するので、他の工場のように夜になると需要が減る訳ではない。大規模なDCが複数同じ地域に集まれば中規模都市に匹敵する電力負荷が加わることもある。NESO(National Energy System Operator)の推計によると、英国内のDCの年間電力消費は2025年の約7.6TWhから、2050年には約71TWhまで増える可能性がある。

DCが増えても英国全体では電力供給能力には余力がある。しかし問題は消費地域だ。現在英国内にある348カ所のDCのうち、約90%がイングランドにあり、その大半はEaling、Hillingdon、HounslowなどWest Londonに集中している。仮にスコットランド沖の風力発電で十分な発電量を得ていても、それをEalingまで送る送電線・変電所・系統接続などが必要になる。この集中した地域では、2022年頃から既に電力ネットワーク容量が逼迫しており、DCと住宅が同じ限られた系統容量を取り合う状況になるなど、住宅開発にまで影響が出ている。

水問題

英国では、古い建物内などでの漏水が多いものの、現在のところ水の需給バランスはとれている。Environment Agencyの2024/25年度データによると、平均で1日に約139.5億リットルが供給されている。そのうち家庭の消費が約60%、企業・工場・店舗・公共施設などが21%、残り19%が漏水となっている。現在のところDCの1日平均使用量は約660万リットル/日で全体の0.05%に過ぎない。DCではコンピューターが高温になるため常に冷却する必要があるが、英国内のDCの51%は水を使わず電力だけで冷却している。残りは電力と水の併用で、水だけで冷却する方式は少ない。

これだけを見ると問題は無いように見える。しかしAI用の大型・hyperscale DCは施設の数は少ないものの、規模は巨大で一つの施設で年間約25億リットルを必要とするところもある。しかも集中しているロンドン周辺地域は従来から水の供給力が不足している地域であることも電力と同様だ。しかも気温がピークになる夏場には日に1,400万リットル必要となる。過半のDCが水を使わず電力だけで冷却していると、夏のピーク時は、気候変動もあり今後更に電力消費量が跳ね上がると予想されている。

www.hirzinger.cc

英政府のAI Growth Zone政策

上記のような状況から英政府はAI Growth Zoneとして、Oxfordshire, North East England, North Wales, South Wales, Lanarkshire(Scotland)の5地域を指定した。West Londonは入っていない。もちろんWest London地域に既に設置されているDCを追い出す訳ではないが、自然発生的にロンドン周辺に集積したDCをそのまま拡大するのではなく、電力政策+産業政策+地域振興政策を一体化させたAI Growth Zoneによってバランスの取れた地域産業クラスターに育てていこうとしている。

日本のDCは更に難問が横たわる

日本も過度な東京集中と電気・水がDCの足かせになっているのは英国と同様だが、日本の場合はそれに加えて、毎年のように繰り返し襲ってくる自然災害に対する強靭性の高いインフラを構築することが非常に重要になる。DCの課題として日本国内では主に電力と通信が議論されており、水は話題に上がっていないようだが、筆者は日本の場合は「水」も見落としてはならない重要なファクターと考える。酷暑日の連続などで水需要が跳ね上がったり、多発する自然災害でDCのインフラに被害が生じた場合に、電力だけでなく、水の確保・安定供給も出来なければDCが機能できなくなる。非常用電源だけでなく非常用水源も同時に考えておく必要がある。

ニュース・活動報告

1 2 3 4 5 … 7 8 9 10

ESG-IREC

Scroll to Top